2024年問題をはじめとして、物流業界にはさまざまな課題があります。それらの解決は容易ではなく、複数の対策を多面的に実施することが重要です。本記事では、物流業界の現状と抱える課題について詳しく解説します。物流業界にDX化が求められている理由も詳しく解説するので、ぜひ参考にしてください。
物流業界が抱える現状と課題
物流業界が抱えている課題には、主に以下の6つが挙げられます。
人手不足
物流業界では、需要の増加と労働力の減少により、適切な労働者数を確保することが難しい状況です。とくに配送ドライバーの不足が深刻で、長時間労働や求人の難しさが業務の遅延や品質低下を引き起こしています。
また、ドライバーの平均年齢が上がっており、少子高齢化が進む中で新たな人材が育ちにくくなっています。
労働環境の悪化
便利なサービスの普及にともない、労働者のタスク量が増加し、長時間労働や深夜労働が常態化しています。このような過酷な労働環境は、労働者の健康やモチベーションに悪影響を及ぼしています。
配送スピードの迅速化
現代の消費者は迅速な配送を求めており、これに応えるためには効率的なルート計画や在庫管理の技術革新が必要です。迅速な配送を実現するための負担は物流企業にとって大きな課題となっています。
再配達による負担
受取人の不在や住所の誤記載による再配達は、物流業界にとって経済的な負担を強いる要因です。再配達はコスト効率が悪く、効率的な受け取り手続きや配達ルートの最適化が求められています。
燃料費の高騰
石油価格の上昇にともない、物流業界では燃料費の高騰が収益性を圧迫しています。持続可能な物流のためには、エネルギー効率の改善や代替エネルギーの導入が必要です。
2024年問題への対応
働き方改革によって2024年からドライバーの時間外労働に上限規制が設けられるため、業務効率の低下やコストの増加が懸念されています。この問題に対処するためには、業務の効率化や適切な人材配置が求められます。
物流課題への対策案
国土交通省や物流業界は、以下のような対策案を掲げています。
輸送網の集約
輸送網の集約を通じて、物流課題を解決することが提案されています。現在、倉庫や工場、荷捌き施設が分散しているため、輸送効率が悪化しています。
この問題に対処するために、輸送連携型倉庫の設立が奨励されており、これにより輸送網をひとつの拠点に集約可能です。結果として運送コストやタスクを軽減し、人手不足や配送スピードの迅速化などの課題を緩和することが期待されています。
輸配送の共同化
輸配送の共同化は、複数の物流企業が連携し、複数の企業の商品を一台のトラックで配送することを指します。この方法により、輸送量を最大化し、業務効率を向上させることが可能です。
従来の個別配送では、ドライバーの負担が大きく、配送の無駄が生じていました。共同化を進めるなら、マンパワーや配送コストを削減し、無駄のない効率的な配送が実現できます。
この対策は、人手不足や燃料費の高騰といった複数の課題に対処できる効果的な手段とされています。
モーダルシフトの導入
モーダルシフトは、鉄道や船舶など多くの荷物を運搬できる手段にシフトすることで、業務効率アップを目指す方法です。トラックによる配送から鉄道や船舶を利用するなら、人手不足や燃料費の高騰といった課題を解決できます。
モーダルシフトは、環境負荷の低減を求める現代社会において重要な対策として位置づけられています。
物流システムの活用と業務自動化
デジタル技術を活用し、物流プロセスの自動化を進めることで業務効率を向上させる必要があります。たとえば、追跡システムや在庫管理システムを導入し、人工知能や機械学習を活用して最適ルートを特定することが可能です。
サプライチェーンの可視化
商品の供給プロセスを可視化することで、業務の透明性と効率性が高まります。在庫や配送ルートを明確にするなら、業務改善が期待できます。
物流拠点の見直し
物流拠点を再評価し、新たな拠点の設置を検討することが重要です。効率向上や在庫管理、顧客満足度の向上に寄与するだけでなく、災害対策としても有効です。
物流業界の課題解決にはDX化が必要不可欠
物流課題を解決するためには「物流DX（デジタルトランスフォーメーション）」が不可欠です。物流DXとは、機械やテクノロジーを活用して物流の効率を向上させる取り組みを指します。
これにより、業務の効率化が図られ、人手不足や長時間労働による労働環境の悪化といった課題を軽減できます。しかし、物流DXは単にシステムや機器を導入するだけで成功するわけではなく、その目的は業務の効率を向上させることにあるため、適切な運用が求められます。
物流業界のDX化の現状
現状では、物流DXの導入が思うように進んでいないのが実情です。理由として、既存のシステムとの互換性や、新しいシステムの導入・運営コストが大きな障壁となっています。従来の方法で業務を行ってきた従業員は新しいシステムの必要性を感じにくく、無駄なコストやシステム操作の習得に対する抵抗感があるため、DX化が進まないのです。
また、データプライバシーやセキュリティの問題も、物流DXの導入を妨げる要因となっています。このため、業界のすべての労働者が物流の現状の課題を理解し、DXの必要性を認識することが重要です。
物流DXには二つの手段がある
物流DXには、主に機械化とデジタル化の二つの手段があります。機械の導入によって人的リソースを軽減できれば、人手不足を解消し、業務を効率化することが可能です。具体的な機械化の例としては、ドローンによる自動搬送や、自動運航船による配送、倉庫内作業の自動化、自動配達ロボの導入などがあります。
一方、物流のデジタル化には、配送手続きのデジタル化、配車管理のデジタル化、トラック予約システムの導入、AIを活用した配車計画の生成といった具体的な方法があります。これらの手段を組み合わせて物流DXを推進すれば、業界のさまざまな課題に対する解決策が見出せるでしょう。
まとめ
物流業界は、2024年問題を含む多くの課題に直面しています。人手不足や労働環境の悪化、迅速な配送の要求などの問題に対処するためには、業界全体でのDX（デジタルトランスフォーメーション）が不可欠です。具体的には、機械化やデジタル化を進めることで業務効率を向上させ、人材不足を解消し、長時間労働を軽減することが必要です。また、輸送網の集約や共同配送、モーダルシフトの導入など、多面的な対策が重要です。これらを実施するなら、業界の透明性を高め、持続可能な物流を実現する道が開けるでしょう。物流DXは、未来の物流業界を支える鍵となります。
