物流業界や運送業界で問題となっている、2024年問題をご存知でしょうか。労働時間に関する法律の改正により、物流業界や運送業界でさまざまな問題が生じてしまう問題のことを指します。この記事では、2024年問題について詳しく解説していきます。また、業務の効率化や人手不足解消の解決策も紹介しますので、参考にしてください。
物流・運送業界で問題となっている「2024年問題」とは
2024年問題とは、働き方改革法案により、ドライバーの労働時間に制限が加わることで生じる問題のことをいいます。ドライバーの時間外労働時間が、年間で960時間に制限されることで、1人あたりの走行距離が短くなり、長距離で物が運べなくなってしまうのです。
物の移動で生活を支えている物流業界や運送業界は、長時間労働が常態化しやすい職業です。長時間労働になる原因は、ドライバーの人手不足や高齢化、ECサイトの利用者の増加などが考えられます。このような現状を改善するために、働き方改革に基づき、時間外労働時間の制限が定められたのです。
2024年問題で変わる拘束時間の目安
時間外労働時間を規制すると、ドライバーの拘束時間を見直さなくてはいけません。1か月の拘束時間を例とすると、時間外労働時間の上限の年960時間は、1か月で平均80時間以内となります。
ただし、1か月の上限には規定がないため、100時間の時間外労働時間があった場合、他の月の時間外労働時間を削減すれば問題ありません。2024年4月以降は、1か月の拘束時間を、274時間以内に収める必要があるのです。
2024年問題で生じる諸問題
ドライバーの労働時間が制限さえることで問題となるのは、物流の停滞です。近年、ECサイトが拡大し、利用者も増えていることから物流量は増加傾向にあります。
労働時間が制限され、さらに人手不足が課題になっているため、物流が停滞する可能性が高いと考えられています。274時間以内を目安とし、これまで通りの働き方ならば、3割以上の荷物が輸送できなくなってしまうのです。
トラックドライバーをやめてしまう人が多い理由
物流業界や運送業界は人員の定着がしにくく、やめてしまうトラックドライバーも多いといわれています。トラックドライバーをやめてしまう、主な原因を見ていきましょう。
拘束時間が長い
トラックドライバーは、渋滞に巻き込まれたり、荷待ちの時間が発生したりするケースが多く、拘束時間が長くなってしまう傾向にあります。労働時間が月275時間を超える事業者は3割以上もあります。トラックドライバーの定着率を上げるには、拘束時間を短縮することが大きな課題となるでしょう。
重労働である
トラックドライバーの業務は、荷物の積み替えや再配達、車両整備など、重労働といえるでしょう。これらの課題を解決するために、整備士の雇用や、お客様に荷下ろしや荷積みを依頼するなど、具体的な取り組みも行われています。重労働の削減や効率化を目指し、フォロー体制を整えることも有効な対策といえるでしょう。
事故のリスクがある
トラックドライバーの主な業務である運転は、事故のリスクも高くなります。事故のリスクを下げるには、ドライバーの健康チェックや休憩時間の確保、勤務時間の調整などが重要になります。定期的な車両のメンテナンスも必要です。
給料水準が低い
トラックドライバーは、重労働であり長時間労働となる傾向にありますが、全産業と比較すると給与水準が低くなっています。2024年4月以降は、労働時間が短縮されるため、残業代などでカバーすることも難しくなるでしょう。物流業界や運送業界では、人員の定着のために、待遇改善に取り組むことが課題とされています。
業務の効率化＆人手不足解消の解決策は？
物流業界や運送業界が抱える課題を解消するためには、どのような方法があるのでしょうか。課題を解消するための解決策を紹介します。
DX化の推進
DX化とは、デジタル技術を活用し、ビジネスプロセスを最適化することで業務の効率化や自動化を図ることをいいます。近年、国内における物流課題が鮮明化・深刻化したことで、集中的に物流産業におけるDX化を推進するべきだと考えられているのです。
DX化のなかで最も効果的なのは、勤怠管理や車両管理などのシステムの導入です。車両動態管理システムは、さまざまな機能が備わっており、業務の見える化や集計分析を通して、効率化が実現します。
労働環境の整備
2024年問題を解決させるためには、労働環境を整備し、働きやすくすることが重要です。労働環境を見直さなければ、辞めてしまう人が増えるだけでなく、ドライバーになりたい人も増えません。
具体的には、有給休暇を取得しやすくしたり、健康的な生活を送れるように福利厚生制度を整えたりすることが大切です。また、働き方改革法案が適用されてから働き方を変えるのでは遅いかもしれません。うまく仕事が回らなくなってしまう可能性もあるため、早めの改善が必要です。
まとめ
2024年問題は、物流業界や運送業界に大きな影響を与えます。人手不足やECサイトの普及によりドライバーの業務負担が増えているにもかかわらず、労働時間が制限されてしまうと業務が回らなくなってしまいます。
これらの問題を解決するためには、業務の効率化を図ることが重要なポイントです。労働環境の見直しや、デジタルツールの活用などが有効な解決策となるでしょう。
